この記事ではAGA治療で使われる薬の種類と、その薬による副作用について解説します。
AGA治療薬は、一般的に抜け毛や薄毛といったAGAの症状を改善するための薬です。内服薬と外用薬の2種類あり、薬ごとに効果や副作用が異なります。
AGAとは?思春期以降に起こる男性型脱毛症
AGAとは、思春期以降に起こる男性型脱毛症のことです。
AGA(Androgenetic Alopecia)
AGAは、主に次の2種類があります。
- 抜け毛が増えるタイプ
- 発毛能力が衰えるタイプ
抜け毛が増えるタイプは、髪の成長を妨げるホルモン「DHT(ジヒドロテストステロン)」が主な原因です。
DHTは男性ホルモンの一つ「テストステロン」が頭皮の酵素と結合して作られます。DHTが生み出されることによって髪が太く長く育たなくなり、薄毛や抜け毛の多さにつながります。
一方で発毛能力の衰えによるタイプは、加齢や生活習慣の乱れが主な原因です。加齢による新陳代謝の低下、生活習慣の乱れによる栄養不足や血流の低下が薄毛につながります。
AGA治療で使われる薬の役割
AGA治療で使われる薬には2種類の役割があります。
- 【攻】髪の毛を生やす
- 【守】抜け毛を予防する
髪の毛を生やすように働きかける【攻め】の薬と、抜け毛を予防する【守り】の2種類の薬です。
AGA治療で使われる薬
AGA治療で使われる薬は主にこちらです。
- ①ミノキシジル
- ②フィナステリド
- ③デュタステリド
どれも内服薬(錠剤)が一般的ですが、ミノキシジルには外用薬もあります。
①ミノキシジル【攻】
ミノキシジルには発毛機能の促進の効果があります。もともとは血圧を下げる、高血圧の治療薬(降圧剤)として開発されましたが、副作用として多毛症がみられました。その後アメリカにて有効性が認められ、世界各国で承認を受けている代表的なAGA治療薬です。
ミノキシジルの効果は、髪の毛の元となる毛母細胞(毛包)へ直接働きかけることで増殖を促進したり、休眠中の毛を活性化させたりして新しい毛を生やします。
特に、頭頂部の薄毛に効果を期待できることがミノキシジルの特徴です。逆に生え際や前頭部は、効果が現れにくい傾向にあります。
②フィナステリド【守】
フィナステリドは守りの薬。抜け毛の予防薬です。
フィナステリドの主な効果は、DHT増産の原因である酵素「5αリダクターゼⅡ型」の働きを抑制するもの。ヘアサイクルを正常に戻し、抜け毛や薄毛の進行を抑えます。
ただしフィナステリドには発毛促進の効果はありません。発毛効果を得たい場合は別のAGA治療薬を併用しましょう。
③デュタステリド【守】
デュタステリドも抜け毛を抑える、守りの薬。
デュタステリドとフィナステリドの違いは、5αリダクターゼI型とII型の両方を阻害できるかどうかです。そもそも5αリダクターゼとは、AGAを引き起こすジヒドロテストステロンの生成に必要な酵素のことで、これまではII型だけがAGAの発症に関係しているといわれていました。
しかし実際には、5αリダクターゼI型もAGAに関係していることがわかったのです。そのため、5αリダクターゼII型しか阻害できないフィナステリドより、I型も阻害できるデュタステリドの方が高い効果が期待できます。
ジェネリック医薬品とは
ジェネリック医薬品とは、先発薬と同じ有効成分・製法で作られる後発医薬品のこと。開発費用がかからない分、先発薬よりも安い価格で同じ効果を期待できます。
ただし治療薬を選択する際は体質に合ったものを選ぶことが大切なので、医師と相談しつつ自分に適したものを服用しましょう。
AGA治療薬の副作用
AGA治療薬には副作用もあります。副作用とは薬を飲んだことにより体に起こる望ましくない効果のことです。
ミノキシジルの副作用
ミノキシジルの副作用はこちらです。
- 初期脱毛
- 動悸・息切れ
- 多毛症
- むくみ
- 立ちくらみ(低血圧症)
- 心疾患
初期脱毛
初期脱毛とは、ミノキシジルを服用後すぐに髪が多く抜ける症状のことです。髪は、成長期、退行期、休止期を経て脱毛します。ミノキシジルによって毛母細胞が活性化することで、休止期の髪が自然に抜けたものとされています。
髪は、抜けてしばらくすると再び生えてくるため、心配はいりません。目安として、1~2ヶ月で初期脱毛が終わり、3ヶ月目から髪が生えてきます。
動悸・息切れ
動悸と息切れは、ミノキシジルの血流促進作用による副作用です。心臓が過剰に血液を供給しようとする働きがあります。
血流は、良ければ良いほど髪が生えやすいと考えがちですが、必ずしもそうとは限りません。血流は身体のあらゆる機能を維持するためのものなので、血流が良すぎると身体の機能に異変が起こる場合があります。
多毛症
ミノキシジルの内服薬は、成分が血液によって全身へ運ばれます。そのため、髪だけではなく全身の毛まで伸びたり濃くなったりする場合があるのです。体毛が濃くて悩んでいる方がミノキシジルを使うと、結果的に悩みが増す恐れがあります。
むくみ
むくみは、血液やリンパ液などが滞ることで起こります。ミノキシジルの内服薬には、顔や足などのむくみが副作用として報告されています。
立ちくらみ(低血圧症)
ミノキシジルの血圧を下げる働きによって、立ちくらみが起こる場合があります。急に立つことで上半身が血流不足になり、立ちくらみが起こるのです。
心疾患
ミノキシジルは細動脈とよばれる大動脈から流れてくる血液の勢いを調整する血管と、冠動脈とよばれる心臓に血液を送る血管に影響が出てしまう人がいます。
冠動脈は太い血管で収縮することにより血液の流れの調整をおこないます。ミノキシジルはそんな冠動脈を弛緩させてしまい、心臓へ運ぶ血液の量が減少し、冠動脈疾患を引き起こす原因にもなります。ひどくなると狭心症になる場合も。
さらに悪化すると心筋梗塞になることもあり得ますが、ミノキシジルの影響によって心臓へ血液がまったくいかなくなることは考えられません。そのためミノキシジルだけで心筋梗塞になることはまずないでしょう。
フィナステリドの副作用
フィナステリドの副作用はこちらです。
- 性機能障害
- 肝機能障害
- 初期脱毛
- 気分の落ち込み
- 乳房圧痛/肥大
性機能障害
性欲減退、勃起不全、精子量減少、男性不妊などが挙げられます。妊活中の人、パートナーがいる方は医師に相談の上で服用を始めましょう。
肝機能障害
肝臓の機能障害の程度を示す指標であるAST・ALT・γGTP高値などが挙げられます。定期的に血液検査を受け、肝機能に異常が無いか調べるようにしましょう。
初期脱毛
治療開始後にも関わらず抜け毛の量が増えることがあります。初期脱毛はフィナステリドが作用することで生じる現象のため、服用から3ヶ月程度で収まることがほとんどです。
気分の落ち込み
まれに男性ホルモンの乱れによって抑うつの症状が出ることがあります。
乳房圧痛/肥大
まれに乳房に痛みを感じたりすることがあります。
デュタステリドの副作用
デュタステリドの副作用はフィナステリドと同等と考えて問題ありません。
ただ、性機能障害においてはやや頻度が高いと言われています。
AGA治療の主な外用薬「ミノキシジル外用薬」
AGA治療薬の外用薬としては、ミノキシジルの塗り薬タイプが該当します。塗り薬は、頭皮に直接塗布して効果を期待するタイプのことです。
内服薬のミノキシジルと同様、毛母細胞の増加促進(発毛効果)やヘアサイクルの正常化(育毛効果)が期待できます。内服薬よりも発毛効果が劣るものの、副作用が少ないことが特徴です。
外用薬は副作用少ない
内服薬と外用薬の副作用の違いとしては、次の表をご覧ください。
〈内服薬の副作用〉
体毛が濃くなる
顔や手足のむくみ
血圧低下によるめまい
〈外用薬の副作用〉
塗布部位や全身のかゆみ
ニキビ
ミノキシジルを服用してはいけない人
デュタステリドを服用してはいけない人
- 同じ種類の成分を服用している人
- 女性、小児
- 重度の肝機能障害のある方
同じ種類の成分を服用している人
デュタステリドは、5αリダクターゼI型とII型を阻害するため、フィナステリドと一緒に服用することはできません。どちらか一方だけでAGAを治療することになります。料金はデュタステリドの方が高いものの、効果も高いことが期待されているため、十分に検討することが大切です。
女性、小児
妊娠初期の女性がデュタステリドを服用すると、胎児の性機能に悪影響が及ぶ恐れがあります。また、小児に対しても安全性が確立されていません。誤ってデュタステリドを服用しないように、ほかの薬とは分けて保管することが大切です。
重度の肝機能障害のある方
重度の肝機能障害があると、デュタステリドの代謝ができず、副作用が強く現れる恐れがあります。これは、デュタステリドに限ったことではないため、重度の肝機能障害がある方は、日ごろから注意していることでしょう。