学びをやめずに「幸せ」と「活躍」をつかむ ゆるく、ミーハーがコツ

学ぶこととは、本来は楽しく、ある意味ではぜいたくともいえる幸せな行為であるはずだ。ところが現代は、「リスキリング」「学び直し」など、社会人が厳しい世の中を生き抜くための学びの必要性や重要性が強調される。学ぶことを強要するかのような風潮には、疲れを感じる人もいるだろう。

本書『学びをやめない生き方入門』は、そんな疲れを感じる人にもおすすめしたい一冊だ。学びに対するハードルを下げつつ、仕事で活躍しながらも学び続ける、幸せな大人になるための方法を説く。

著者の中原淳氏は、立教大学経営学部教授。本書は、パーソル総合研究所とベネッセ教育総合研究所による共同研究に中原氏が加わって行った、「働く大人の望ましい学び」に関する研究プロジェクトや、関係する定量調査をもとに執筆されている。「学び」と「幸せ」の関係性について、のべ9600人を対象として大規模リサーチを行ったという。

本書は、学びをやめないことが、幸せな生き方につながることを思い出させてくれるとともに、リスキリングの意欲を長く継続していくためのヒントにもなりそうだ。

学びたいのに学べない人がもつバイアス

日本人は、社会に出てから「学ばない」という話を耳にしたことがあるだろう。著者らが、世界各都市で働く人に「勤務先以外での学習や自己啓発」について尋ねた調査でも、日本は「学びをなにも行っていない」人の割合がダントツ1位だ。

本書によれば、「学びたいのに学べない」状況にある人には、学びのハードルを高く感じてしまうバイアスがある。例えば、学びは若い人や新人のものであるとか、自分は学びに向いていないという思い込みなどだ。

本書では、こうした思い込みが生じる原因を、学校教育にまでさかのぼって示す。確かに、学校で勉強に苦手意識を抱いたり、できないことを「恥ずかしい」と感じたりすると、自ら進んで学ぶ意欲はもちにくくなりそうだ。しかし実際は、社会人の学びは、受験勉強のような個人のスコアを競うものではなく組織のために生かすものが多いなど、学生の勉強とは本質的に異なる。バイアスを取り除き、コンプレックスや拒否反応をなくすことが、学びを始める第一歩だろう。

著者らは、「望ましい学び行動」について、本人の「幸せ」と「活躍」に寄与するものと定義する。そして、実際に活躍し、幸せも感じている人たちが、どう学んでいるのかを調査した。なお、「幸せ」を感じていて「活躍」もしている人に該当したのは、全体の30.6%だ。結果、共通する5つの行動が浮かび上がったという。(1)共習する(2)ゆるく続ける(3)ミーハーする(4)逆境する(5)学び結ぶ――だ。

(1)は、誰かと一緒に学ぶことを指し、まねし合う、教え合うといった効果がある。(2)では、三日坊主になってももう一度はじめられるような、ゆるく継続する力が重要と説く。

興味深いのは(3)だ。ミーハーとは通常、新しいものに飛びつく軽々しい態度をやゆする言葉だが、ここではポジティブな意味で使われる。SNS(交流サイト)や生成AI(人工知能)、新しいソフトウエアなどを、まずは触ってみることが重要という意味だ。さらに、一度触ってみて、合わなければやめるという「ティンカリング」と呼ばれる学習法も紹介する。近年は、新しい商品やサービスが次々と出てくる環境だ。「やめていい」という気軽な心構えは、うまくいかなかった際に「やっぱり無理だ」などと自信をなくして消耗しないためにも重要だろう。

(4)は、困難や失敗を「学びの機会」ととらえること、(5)は、学びを点で終わらせず、仕事や実践、別の学びとを橋渡しすることを指す。

本書では、具体的な人物のケースも紹介されているが、身近にいる楽しそうに働く人に話を聞いてみてもいいかもしれない。読書会を主催しているとか、ハッカソンに参加しているなど、学びを実践している人は意外に多いはずだ。そうした人が仕事での活躍と同時に幸せも感じているというのはうなずける。

突破口となる3つの経験

とはいえ、学びから離れていた人が、もう一度一歩を踏み出すのが大変であるのは間違いない。そこで本書は、学びをやめない生き方に向けて突破口となる、3つの経験をあげる。(1)お出かけ経験(2)見渡し経験(3)のめり込み経験――だ。

自分が所属している組織や場所を抜け出す「お出かけ」や、目先のことに囚われない広い視野や長期的な視点を持つ「見渡し」、全力でなにかに打ち込む、あるいはフィールドワークといった「のめり込み」の経験は、前にあげたバイアスを乗り越えるきっかけになるという。

学びの再開の一歩目は、仕事に生かせることではなくてもいいのだろう。自分の人生をより豊かに、幸せにするために、新しいものに触れ、学び続ける。その姿勢が仕事にもつながっていく。まずは本書を手に取ってみる勇気が、学びをやめない生き方への入り口かもしれない。

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