「デジタル迷子」を卒業せよ ミドル・シニア世代のためのリスキリング入門

「デジタル格差」が生じつつあるとすれば、あなたはどちら側だろうか? 近年のビジネス環境は、あらゆる方面からデジタル化が進んでいる。「逃げ切りたい」と考えるミドル・シニア世代もいるかもしれないが、変化は待ってくれないばかりか加速中だ。基本的なデジタルスキルなしでは、これまで身につけてきた力さえ、あっという間に発揮できなくなる可能性がある。

とはいえ何を、どこから勉強していいかわからないという方に手にとってほしいのが、本書『今からでも遅くない デジタル・リスキリング入門』だ。リスキリングとは何かから解説し、有効なデジタル系の資格やスキル、リスキリングでキャリアを変えた個人や企業の事例などを、初心者向けに、対談やインタビューといった読みやすい形式で紹介している。自身のデジタルスキルに危機感を持ちつつ第一歩を踏み出せずにいる人にはうってつけだろう。

なお本書は、当サイト「NIKKEIリスキリング」における連載「デジタル迷子のリスキリング」を大幅加筆・修正してまとめたもの。著者の早津昌夫氏はトレノケート社長。祁答院薫氏(ペンネーム。本名は角田仁)はデジタル教育推進機構理事長、デジタル人材育成学会会長。

明確な目標を持てる資格取得でリスキリング

早津氏と祁答院氏の対談において、祁答院氏は「世代間のデジタルリテラシー格差」が広がることに危惧を示す。学校教育においては、小中学校のGIGAスクール構想に始まり、高校では2022年から「情報Ⅰ」が必修化、25年1月の大学入試共通テストからは「情報」が追加された。

ITリテラシーを素養として身に付けた世代が今後、続々と社会に出てくる。一方、ITの基礎知識を学ぶ機会がなかったミドル・シニア世代との間に、社会問題ともいえるほどのデジタル格差が生まれる可能性があるというのである。

では、若い世代に置いていかれないために、これからできることは何か。祁答院氏は、学習の目標や範囲が明確で勉強しやすいことから、資格取得によるリスキリングを勧めている。まずは、「Di-Lite」と呼ばれる三大資格から始めるのはどうだろう。(1)デジタルに関する一般的な知識を身に付ける「ITパスポート」(2)AIの基本を学ぶ「G検定」(3)データ関連の基礎を身につける「DS(データサイエンティスト)検定」の3つだ。いずれも、中高年でも真面目に勉強すれば、短期間で取得可能とされる。

これらの3つは、日本独自の公的な資格試験だ。このほか、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)やマイクロソフト、グーグルなどテック企業大手の認定資格も多くあり、IT企業を中心に認定資格取得を求める企業が増えているという。

私自身も文系出身でITやデジタルは得意でなかったが、2年ほど前、会社の補助を受けてITパスポートを取得した。基礎知識が身につくだけでなく、苦手意識の克服にもつながった。AIがますます社会に浸透する昨今、将来的に格差に悩まないためにも、次はG検定を……と、本書を読みながら考え始めた。

上司としても顧客としても問われるデジタルリテラシー

DXを推進する企業は増えているが、その場合、人材には(1)テクニカルスキル(2)ヒューマンスキル(3)コンセプチュアルスキル――という主に3つのビジネススキルが必要になると、インタビューに登場するトレノケートのラーニングサービス部門本部長、蔦田哲也氏は述べる。

テクニカルスキルとは、ITや営業、技術部門などの現場で業務遂行に不可欠な知識や能力だ。ヒューマンスキルは対人関係能力を指す。上意下達の企業文化で育ち、部下は命令に素直に従うものだと思っていると、有能な若手が辞めてしまいかねない。デジタルスキルの高い人にも、適切な指摘や共感を得られるフィードバックなどコミュニケーション力を伴うヒューマンスキルが求められる。さらに、コンセプチュアルスキルとは、問題の本質を見極めて概念化する能力。DXには欠かせない能力であり、リーダー層になるほど、このスキルが求められるようになる。

管理職ともなれば、これらのベースとして必要になるのがデジタルリテラシーだといえるだろう。部下の仕事を正しく評価するには適切な知識が必要だし、顧客としてベンダーと話をする場合にも、細かな仕様やセキュリティー機能などについて十分にコミュニケーションできるだけの知識と能力が問われる。このため、簡単なプログラミングを体験してみる経営者も増えているようだ。

リスキリングしてジョブチェンジする人は、まだ少数派という。しかし、今いる企業、業種、職種においてデジタル化やDXが推進されれば、求められるデジタルリテラシーは日に日に高まる。常にアップデートを続けなければ、若い世代の高いITレベルが標準になる中で脱落しかねない。モチベーションを高く保ち、楽しく仕事を続けるためにも、デジタル・リスキリングの第一歩を踏み出したい。

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