【進化心理学から考えるホモサピエンス】人の進化の過程で得たサバンナ原則とは

サバンナ原則 心理学

ここでは、進化心理学で一つの考えとなる「脳」についてのサトシ・カナザワ氏が提唱したサバンナの法則について、解説します。



サバンナ原則とは

“Savanna Principle” is a term coined by Satoshi Kanazawa in 2004 for the principle that human behavior remaining to some extent adapted to the ancestral environment of early Homo in the savanna may lead to problems in a modern (Industrial or post-Industrial) environment.

(日本語訳)「サバンナ原則」は、サトシ・カナザワが2004年に提唱した造語であり、現代の人間の行動がサバンナにいたホモの祖先の環境にある程度適応したまま残っていて、現代(産業革命以降)の環境では問題になる可能性があるという原理。

まず前提として

脳は特別な器官ではない。体の一部の器官でしかないということである。

人類は進化してきたことは言うまでもないが、それは、手の水掻きや膵臓だけでなく、脳も同様だと言うことだ。



進化のスピードが遅い

人間は進化のスピードが遅い。

動物の進化のスピードは、”成熟”までの期間との相関関係があることがわかっている[2]。つまり、成熟までが早いほど、進化のスピードも速いと言うことである。

たとえば、ショウジョウバエは7日で静的に成熟するのに対して、人間の性的成熟は、20年程度かかる[2]。

人間が成熟する20年の間に、ショウジョウバエは1000世代以上かさねることができる計算になる。

ちなみに、人間が1000世代を重ねるには、2万年かかる。

すなわち、1万年前から人間は、ほぼほぼ進化していないということになる。(ただし、何万年も前からは進化しているといえるかもしれない:7万年前に突然変異が起きた可能性などもある[3]。)

男性の建築家が多い理由

建築家といえば、男性のイメージが強い。この現代ではその言い方は良い悪いではない。事実上、男性が統計的に多く、アメリカや日本においても女性比率は2~3割といったところだ[4,5]。実際、私生活都の両立が難しいことや性的な差別などの問題はある[5,6]。これは軽視できないことがあるが、進化論的に建築家が多いことを説明できる。ゆえに、男性が多いのは自然と言えるのだ。

先ほど、述べたように、人間の脳を含め1万年からほぼ進化していないのだ。すなわち、人間の適応は1万年前の感覚を持っている。

1万年前は、旧石器時代の終わりから新石器時代などであるとされるが、生きるためにしていたことは、「男性が狩りや採集を主にしていた」ということだ。

木に印をつけるなどをしていたが、地図もGPSなどもなく何日間もかけて、狩りや採集などをしていた。そのときに、男性は空間認知能力、空間視覚能力が身についたといっても良い。

現代でもその統計は表れている。建築家のみならず、数学の図形分野は男性の方が強いともされている。理系に男性が多い理由もそうだろう。

だから、建築家を含め、空間に関することは男性が多いのは今でも変わっていないのである。

人間はスーパーマーケットを理解できていない

スーパーマーケットとは何?ということではない。

人間の肥満や生活習慣病などを引き起こす1つの理由が、スーパーマーケットというものにあると言えることだ。

1万年前から変わっていない人間は、食糧がなかなか手に入らない環境に適応している。すなわち、溜め込み、エネルギーに変えやすい糖質や炭水化物、タンパク質などを取り込む[7]。

だが、現代社会(工業社会)において、食糧がなかなか手に入らないとはならない。つまり、食糧はすぐに手に入る(スーパーマーケットがある)のに身体の溜め込みやすい性質は変わっていない。

よって、肥満や生活習慣病などが増えたり、発生したりする。

人間はスーパーマーケットという存在を理解できず、肥満に陥ることがわかるだろう。

まとめ

「サバンナ原則」(The Savanna Principle)を具体例を使ってまとめてみた。人間の先祖の適応環境が人間にも当てはまることは他にもたくさんある。それを意識してみながら生活に目を向けてみると、面白いかもしれない。

参考文献にもあるように『進化心理学から考えるホモサピエンス』のp.35-43にサバンナの法則のことが書いてあるので、手に取ってみてほしい。(URLは参考文献ー文献詳細(一部)に埋め込み記載)

参考文献

  1. “Satoshi Kanazawa”. wikipedia, last edited: May 23, 2022. https://en.wikipedia.org/wiki/Satoshi_Kanazawa(参照日: 19, July, 2022)
  2. Alan S. Miller & Satoshi Kanazawa. (2020).『進化心理学から考えるホモサピエンス』(伊藤和子). パンローリング株式会社. p.35-43.
  3. WIRED JAPAN. (2019)”人類の文化的躍進のきっかけは、7万年前に起きた「脳の突然変異」だった:研究結果”. https://wired.jp/2019/09/01/recursive-language-and-imagination/ (参照日: July 19, 2022)
  4. Depina Stratigakos. (2016). “Why is the world of architecture so male-dominated?”. https://www.latimes.com/opinion/op-ed/la-oe-stratigakos-missing-women-architects-20160421-story.html (参照日: July 21, 2022)
  5. “女性建築士の割合はどのくらい?子育てや結婚との両立は難しい?”, 日建学院,
    女性建築士の割合はどのくらい?メリットや年収、子育てや結婚との両立について徹底解説|合格を目指すなら日建学院
    女性建築士の割合がどのくらいなのか知りた...
    (参照日: July 21, 2022)
  6. “建築業界の仕事(7)「女性建築士の現状は?」”, AIJIS, last edited:18 January 2017, https://aijis.jp/topics/column/kenchiku-shigoto/611/(参照日:21, July, 2022)
  7. Satoshi Kanazawa. (2004). The Savanna Principle. MANAGERIAL AND DECISION ECONOMICS. p.41-54.

文献詳細(一部)

  1. [7]. Satoshi Kanazawa. (2004). The Savanna Principle. MANAGERIAL AND DECISION ECONOMICS. p.41-54.



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